部屋に入ると小さなちゃぶ台の上に適当な雑誌を広げて、一旦はそのまま捨ててしまおうかと思ったバーガーを袋から取り出して置いた。
噛んだ歯形が見事に残っている。自分の口はまん丸くて良い歯の形をしているのだと妙なところで認識するのだったが、その部分からは春雨は見えない。縮んで引っ込んでしまったのか。
重なったパンを摘まみ上げてみる。すると、春雨はぐるっと回るような渦を巻いてた。機械的な渦だと思った。辛子やケチャップや野菜やマヨネーズがもっともつれ合った姿を想像していたが、整っていた。
しかし、噛んだ部分が見えない。どうしてだろう。不思議な思いでちょっと顔を近づけてみる。ちゃぶ台の上にいつも転がっている割り箸で一部を探って、一本摘まんで引っ張ってみた。灯りで透けるように顔を横位置に下げてじっくりと観察した。
麺が二重に見える。黒っぽい芯があって外が透明にできている。複雑な形をしている。こんな春雨があるだろうか。芯のように見えるのはなんだろうか。製法の関係でできるものだろうか。
虫眼鏡がどこかに…そう思ってちょっと振り向いたら油断して春雨が落ちた。アッと思ったら、そいつは引っ張ったゴムが縮むように勢いよく春雨の渦の中に消えた。
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