2021年10月3日日曜日

癌 1

元々強いほうじゃなかった。まだ若い頃に胃潰瘍で一度切っているし、緊張したりストレスを感じると唇が荒れた。そんな兄は胃薬を手放せなかった。時たま品を変えたりして、何十年もそれでやってきた。しかしある時、胃がムカつくと言って気分悪そうにしていたと思ったらいきなり流しでゲロゲロとやった。

うちの一家はこんなときいつもそうなのだが、土曜日の夜で医者へは行かなかった。兄は休んでいれば大丈夫だと言った。一応月曜日に近くの開業医で診てもらうことにした。医者は別の大きな病院を紹介した。ここでは設備がないと。一日置いた指定日に紹介状を持って出かけた。私は仕事を抱えていたが、幸い自宅での仕事だったし、多少の納期もあったから診察にずっと付き合うことになった。

紹介状を読んだ医師は隣町の大学病院からの出向だった。准教授らしい。容態の説明を多少した後に胃カメラに回されて、その後長い時間待たされたが、付添いの方どうぞと、何故か私だけが診察室に呼ばれた。私が椅子に座るなり医者は言った。

「駄目だねこりゃ…」

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