2023年2月23日木曜日

粘着質--11

邪気は誰にでもある。それが異常か普通に収まるかの違いしかない。しかしそれなら、異常はどこから来るのか。

世の中には犯罪に走る奴とそうでない奴が居る。強請りたかりができる奴とそうでない奴が居る。異常性欲者とそうでないのが居る。ストーカーになる奴とそうでないのが居る。早く言えばそんなことと同じだろうか。

「で、ブログを止めて後はどうするんだ」

「なにも…」

「なにもしない?」

「そう」

「今までやってきたことがもったいないじゃないか」

アッハッハと彼は笑う。そうでもないと彼は言う。

「ブログが大事なんじゃなくて、それを続けるために絵を描き続けて、俺みたいなヘボでも多少前進があった。それでいいんだよ」

「前進があってどうするんだ。やっぱり公開しなきゃつまらんだろ」

「そのうちまたね。適当にその気になったら始めるさ」

しばらく休むのも悪くない。今はとにかくシャバシャバした気分だと彼は言う。しかし、と私は思う。彼にわざわざシャバシャバと言わせるのだから、それはそれで鬱陶しかったに違ない。

「お前の感じる通り、この人は邪気がきっと凄いんだ。俺はスピリチュアルなことは言いたくないが、邪気からは遠ざかった方が良い。どこかで切らないとろくなことがない」

「それはそうだろうけど、だからって、一度切ってもどうせバレるぜ。ずっと止めちまうんならともかく、絵を見りゃ分かるんだろうから」

「まあ、その時は多少遊ぶさ」

どんな考えがあるか知れないが、彼はハッハッハと笑った。




2023年2月4日土曜日

春雨バーガー 14

確かに、ステーキに虫が混入していたなど聞いたことがない。でも、だからって今日はステーキを食べる気になれない。たらふく食べる心境にないのだ。

「食べなきゃ死んじまうんだぜ」

「分かってるよそんなこと」 

「じゃあ行こう。とにかく長いものを遠ざける訳だな。ラーメンうどんの類はやめて、野菜のてんぷら定食なんかだったらどうだ」

「別にそんなに神経質になっている訳じゃないよ。ただ、どうして立て続けにと思うだけさ」

「物事は、起きる時には重なるのさ。ほれ、飛行機事故なんかそうだろ」

彼はそう言って確率の片寄りなどというお説をひとしきりぶつのだった。何度も聞いた。サイコロ六回を振って綺麗に確率が散らばることはない。必ず同じ数字が出る。 そんなことから宝くじを当てる方法も考えたらしいが、当たったことは一度もない。

 ブラブラと二人で歩いた。辺鄙な田舎町だから食堂などいくらもありはしない。駅前にファミレスのひとつもない。人々の多くは自宅で食事をするだろう。そう言う町だ。それでどうして食堂があるのか、むしろ不思議なくらいだった。

「でもよ、駅前にバーガーショップがあるじゃん」

「そりゃそうだけど」

「店があるってことは需要もあるんだ。お前は越してきたばかりで町を知らないんだよ」

しかし私は、あの店はきっと長く持たないと思った。春雨バーガーなんか、どんなもの好きが食べるのか。