2024年1月18日木曜日

癌--15

兄が賭け事にのめり始めた理由はそれなりにあるかも知れない。元々の性格がルーズだったことは間違いないが、冴えない家業を強いられて日々のうっ憤があったろう事は容易に想像できる。試験勉強もちゃんとこなし成績も良かったのだからなにもかもがルーズという訳ではない。しかし一旦踏み越えてくると押さえが訊かなくなる。意外な人が賭けごとにのめるには、ある種のメカニズムが働いて、それに引っかかってしまうと誰でもきっとそうなり得るのだろう。身を持ち崩す社会人はどこにでも居て、別に兄だけの問題じゃないのだが、にしても、どこかで止まることはなかったのかと思わぬでもない。

しかし、人と言うのはそういうものだ。心の中では何とか解決方法を探すのだが、負けが込むとそれを取り返すためには更に賭け事をするしか方法がないのだ。借金に追われた身で更に借金を重ねて一発当てに行くようになる。言い出せる段階ではなくなっている。

一度は隠し通せなくて一家の大問題になった。首を吊ろうと思っていたと兄はその吐露した。親戚中から金を工面してどうにか凌いだ。親戚には遂に返済しないまま今日に至っている。

一旦は身軽になったが、癖は取れなかった。主に競馬から小さく始まって、長い時間かけて同じことになった。