病院の、サンルーフと呼ばれる待合室のようなところで手術が終わるのをぼんやりと待った。終わったときに看護師が呼びに来てくれるので、手術を待つ人が大方ここで待つようになっている。
左程飲みたくもないのに、自販機から一本出して、飲むでもなく飲まぬでもなく、備え付けのテレビでニュースを見るけれども、眺めているだけで何も頭に入ってこない。
奥の方では主婦のグループがボソボソと話をしている。いつから悪かったとかどうだったとか、病気の話ばかりだ。
この部屋の空気は、少ししんどいと感じた。外は屋上。そこから町を眺めてみようと思った。訓練歩行をしている患者や車いすを押している看護師が何人か居たが、それぞれには無関心だ。
柵によっかかって、自分たちの住んでいる辺りを探してみる。駅に近いスーパーから見当を付けて道筋を追うと、曇り空の向こうに小高い丘を削って宅地にした場所が見える。小さなプラモデルのような屋根が幾つも並んでいる。そこが私たちの住まいだ。何の因縁か、縁やゆかりができようとは思わなかったこの町に家族は住むことになった。バブルが弾けて、そろそろ買えるようになった頃、中古の住宅を私が購入した。あると言っても精々そんな因縁だ。そんな町の病院で、兄は命を終えようとしている。
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