「それでそんなものばっか喰ってんのか」
あきれ顔で彼は言った。元同僚のMだ。狭い一室で机を並べて仕事をしていた。つまらない不鮮明な図面を書き起こす退屈な仕事だった。じっと我慢してれば良かったかもしれない。しかし単価を巡ってㇳラブルになり私は会社を去った。
「それじゃ体を壊すぜ」 部屋の中の様子をずっと見まわしてから私の眼を見た。
「そうだけど、なんだかなあ」
「そんなの見たらしばらくはそうかも知れないけど、直ぐに普通に戻るさ」
どうも越してきてからの雰囲気が変なので私が彼を呼んだのだ。私が去った後も付き合いは続いていた。一泊して日曜日に帰る予定だ。
「炊事はしてるの」
「あんまり…」
「だろうな、ここじゃ」
「する気になったら何でもできるさ」
と言ってもこの数日はポテトチップスやインスタントラーメンみたいのばかり食べている。それを彼は心配しているようだった。
「俺な、親元から離れて独り住まいを始めた時、節約する意味でインスタントラーメンにコロッケを入れてコロッケラーメンばかり食ってたんだ」
「コロッケラーメンは美味い」
「美味いけどよ、インスタントは身体に悪いんだよ。たまには良いけど連続して食べるもんじゃない」
「どうなるんだ」
「激しい下痢を起こす。それが何日も続く」
「下痢か…」
下痢が続くと何度もトイレに駆け込むことになる。今のトイレを考えるとちょっと面倒だなと頭を過った。
「多分、油か何かが悪いんだな。毎日下痢が続いたら身体からビタミンAが抜ける。俺はそれで目を悪くしたんだ」
彼はスモークの入った眼鏡をかけている。それが理由だったのか、今まで知らなかかった。
「晩飯は外へ行くんだろ」
「うん…」
「俺は気にしないが、お前は心配のないのを食べりゃいいんだ」
ラーメンや魚以外なら大丈夫だろうと彼は言うのだった。
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