2023年1月3日火曜日

春雨バーガー 13

「それでそんなものばっか喰ってんのか」 

 あきれ顔で彼は言った。元同僚のMだ。狭い一室で机を並べて仕事をしていた。つまらない不鮮明な図面を書き起こす退屈な仕事だった。じっと我慢してれば良かったかもしれない。しかし単価を巡ってㇳラブルになり私は会社を去った。 

 「それじゃ体を壊すぜ」 部屋の中の様子をずっと見まわしてから私の眼を見た。 

「そうだけど、なんだかなあ」 

「そんなの見たらしばらくはそうかも知れないけど、直ぐに普通に戻るさ」 

 どうも越してきてからの雰囲気が変なので私が彼を呼んだのだ。私が去った後も付き合いは続いていた。一泊して日曜日に帰る予定だ。 

 「炊事はしてるの」 

「あんまり…」 

「だろうな、ここじゃ」 

「する気になったら何でもできるさ」 

と言ってもこの数日はポテトチップスやインスタントラーメンみたいのばかり食べている。それを彼は心配しているようだった。 

 「俺な、親元から離れて独り住まいを始めた時、節約する意味でインスタントラーメンにコロッケを入れてコロッケラーメンばかり食ってたんだ」 

「コロッケラーメンは美味い」 

「美味いけどよ、インスタントは身体に悪いんだよ。たまには良いけど連続して食べるもんじゃない」 

「どうなるんだ」 

「激しい下痢を起こす。それが何日も続く」

 「下痢か…」 

下痢が続くと何度もトイレに駆け込むことになる。今のトイレを考えるとちょっと面倒だなと頭を過った。 

「多分、油か何かが悪いんだな。毎日下痢が続いたら身体からビタミンAが抜ける。俺はそれで目を悪くしたんだ」

 彼はスモークの入った眼鏡をかけている。それが理由だったのか、今まで知らなかかった。 

 「晩飯は外へ行くんだろ」 

「うん…」 

「俺は気にしないが、お前は心配のないのを食べりゃいいんだ」 

ラーメンや魚以外なら大丈夫だろうと彼は言うのだった。

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