名前を聞いたこともないようなコンビニなんか世間にいくらでもあるだろう。割とその地だけでやっている店だってあるかも知れない。都内にだっていくらもあった。ほとんど消えてしまったけど。
私は店内に入って弁当を探した。品は幾らもなかった。鯖塩らしきがあったが、あまり魚を食べたいとは思わなかった。ブリの照り焼きのことが蘇った。その時点で食欲が幾らか減ってしまった。段の上にはおにぎりがあった。そんなものの方が良いと思った。
「ここで食って行こうか」
Мが後ろから声をかけた。
「ここで?」
「そうだよ、その方が荷物が軽くなるじゃん、あれこれ買って置こうや。道は後で訊けば」
それもそうだと思い、店の前を見たら小さな丸テーブルが置かれてあった。入ってくる時には気がつかなかった。
「あそこで食えばいい」
頷き合って私はおにぎりとサンドイッチ、エムはカップラーメンとポテトチップスで良いと言って、他に適当に口に入りそうなものを買い込んだ。
店員にお湯を注いでもらって外に出た。店員は制服を着ておらず私服のようだった。個人のみせだろうか。
テーブルに座って何分か待っている間にポテトチップスを互いに頬張った。虫を連想させるワーム系は私は気が進まなかった。
エムはボソッと私に訊いた。
「それにしてもお前、どうなんだ、こんなところに住んでみて」
「どうって別に」
「遊ぶとこなんかどうしてんだ」
「まあその時になったら…」
「気の長げえ話だな」
言いながらエムは蓋をむしり取ってジュボジュボッと音を立てながらカップ麺を頬張り始めた。と思ったら顔をしかめた。
「どうしたんだ」
「なんか臭え」
「ほんとだ」
顔を近づけて私も臭いをかいでみた。
「酸っぱいし、あまり食べたことねえ味だな」
そう言いながらエムは器を回転させてジロジロ眺めた。
「こんな名前のメーカー知っているか」
デザインが有り触れているのでメーカーまでは気にしなかったろうが、よく見ると聞いたこともないような会社の名が記されていた。輸入元○○商事。
東南アジアのメーカーのようだった。